山梨大学教育学部
附属教育実践研究指導センター研究紀要原稿

米山氏原稿

1998.1.19. 現在

IV 考古教材研究会の活動の一環としてのWeb化


 山梨県埋蔵文化財センターでは,月末の午後,いくつかのグループに分かれて研修を行っているが,その中の1つに「考古教材研究会(以下教材研と略)」がある。この教材研ではセンターに所属する教員文化財主事が中心となって「考古資料の有効活用及び資料化」を目的として活動してきたが,ここではその紹介とともに「教材化」という視点から今回のWebページ作成について述べる。
教材研では,先にふれたよう県埋蔵文化財センターで発掘された考古資料の教育普及という観点から1991年に発足し,翌年からは教員及び児童・生徒向けとして「先生のための考古資料集」を第5集まで発行してきた。その間1996年に県内各校の教員に対してアンケートを実施したところ,考古資料の教材化について望まれているのは主に次の3点であった。

・地域性(山梨県に関する遺跡の情報を教えてほしい)
・速報性(現在の発掘情報を教えてほしい)
・ビジュアル性(写真,特にカラーのもを多くしてほしい)
 これらは,平成元年に改訂された文部省の学習指導要領にも明記されている。以下はその一部である。
・身近な地域や国土に残っている遺跡や文化財などを調べて,自分たちの生活の歴史的  背景に関心をもつとともに,わが国の歴史を学ぶ意味について考えること。[小学校  第6学年・内容(1)ア]
 ・内容の(1)及び(2)については,考古学などの成果を活用して生活の有り様のあらましを理解させるとともに,神話,伝承などの学習を通して当時の人々の信仰やものの見方などに着目させるよう留意する。(以下略)[中学校歴史的分野・内容の取り扱い(2)]
 ・地域の史跡や諸資料の調査・見学などを取り入れるとともに,遺物,伝承などの文化遺産を取り上げ,祖先が地域社会の向上と文化の創造や発展に努力したことを具体的に理解させ,それらを尊重する態度を育てるようにすること。[高等学校日本史B・  同(3)ウ]
また,小学校においては次のような記述も見られる。
 ・指導計画の作成に当たっては,博物館や郷土資料館の活用を図るとともに,身近な地域及び国土の遺跡や文化財などの観察や調査を行い,それに基づく表現活動が行われるよう配慮する必要がある。[指導計画の作成と各学年にわたる内容の取り扱い]
これらから,今まで以上に遺跡や遺物,更に考古・民俗学などが授業の中で果たす役割はより重要なものになってきている。
 そこで,教材研では新しい試みとして1996年度,それらの点を重視した「先生のための遺跡だより」を4号まで発行した。しかし,多くの問題点があったのも事実である。まず,教材研の出版物は基本的に自主的なものであり,予算が限られている。印刷はパソコンのプリンターを使用して行ったが,インク代などが高額になり,定期的に発行することができなかった。次に時間的な問題がある。県内の学校・教育機関は約400あり,各号の印刷が終了するまでに数週間が必要となり,印刷時期は発掘が終了して時間的に余裕のある1〜3月に限定されてしまった。更に,前述の予算的,時間的なことを考えた場合写真のサイズをあまり大きくできず,当初の目的を十分満たせなかった。
 以上のような問題点で,図らずも「〜遺跡だより」が必ずしも最良の方法ではないことが理解され,この欠点を補う意味でインターネットが有効であると考えられるのである。以下,そのメリットについて述べてみたい。
 まず,ビジュアル面についてである。写真などに関しては「〜遺跡だより」と同様カラーのもの,加えてより大きなサイズのものが使用可能であろうこと(無制限というわけにはいかないが)を考えれば,より本物に近い情報を提供することができる。生徒にとっては実物を見るインパクトに勝るものはなく,その点では資料として有効である。また,身近な歴史を知る手がかりという点でも同様であろう。
 次に速報性の面である。ページの作成さえ終了すればすぐに画面上で情報を得ることが可能である。また,予算的な面でも発行部数が制限されることがないため,いつでも好きな時に,自由に見たり資料として利用することができるのである。
 ここまでインターネットを学校教材として利用する利点について述べてきたが,この方法にも問題がないわけではない。その1つは更新の時期である。先にふれたように,「〜遺跡だより」の速報性が活用できなかった最大の理由は,作成・印刷が発掘のある時期にできなかったことだった。今後Webページ作成の段階でも同じ問題がでてくる可能性は否定できない。いかにして定期的(しかも短い周期で)に新しい情報を更新していくかが現実的な課題となってくるだろう。
 2つ目は利用の形態である。現在,県内の各学校の現状を考えた場合,生徒用のパソコンに電話回線が接続されているところは(特に小中学校では)あまり多くない。当面は教師が必要に応じてプリントアウトする,あるいはコンピュータ画面を液晶プロジェクターで投影するなどの方法が最適であるが,これでは生徒にとって受け身の教育になってしまう。コンピュータを利用するメリットは十分発揮できないし,学習指導要領の総則にある「自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力の育成」「個性を生かす教育の充実」といった方針にも対応できているとはいえない。 
 また,この方式で画像データ等を印刷物として使用した場合には当然著作権の問題も生じてくる。
 以上あくまでも「教材」としてみた場合,インターネット利用において予想されるメリットとデメリットをいくつか挙げてみた。この試みはまだ始まったばかりであり,学校にとっても次第に重要な要素となっていくだろうが,それには情報を提供する側と利用する側双方の努力と共に,今後進んでいく学校側での受け入れ体制(通信回線)の整備も必要となっていくであろう。


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