山梨大学教育学部
附属教育実践研究指導センター研究紀要原稿

 

1998.1.19. 現在

 

V 今後の展望と課題


考古博物館ではWebページの本来的な目的としては考古博物館の展示,遺跡などの情報を紹介するということ以外に,学校など教育機関に考古資料を教材として提供するという視点を入れている。このような点をねらったWebページを作っていきたい。


1 考古博物館の収蔵資料
考古博物館における収蔵資料というのは,遺跡の発掘によって出土したものだけではなく,遺跡での住居跡や古墳の全体像など発掘中の現地での写真も重要な資料となる。さらに遺跡全体を測量した図面や住居跡などの配置図,遺跡の位置などもふくまれる。そのほとんどは発掘調査後に報告書という形でまとめられているが,ほとんどが記録目的のためであり,専門知識がないと活用しにくい。考古博物館の基本的な機能と関連するが,考古資料をどのように一般に理解できるかたちで展示・公開していくかは,博物館の基本構想のもとに設定され,細かな部分では所属学芸員の運営方針によって決定されていく。山梨県立考古博物館は考古学そのものを展示紹介していくというよりは,考古資料を通した山梨県の歴史をみていくという視点が強調されている。考古資料は美術品ではなく,あくまでも歴史性をになったものであり鑑賞対象とはならない。美術的価値がまったくないわけではないが,むしろその時代の特色が
明確になるものを展示の対象としているのである。
(1) 常設展示の紹介
 考古博物館の場合,常設展示では県内の考古資料をとおして山梨県の歴史とその特色を紹介するようにしている。発掘調査の成果により随時展示品は入れ替えを行っているところである。現在,Webページは,当館が刊行している常設展示案内「古代望見」を基礎にして構成されている。そのためWebページは,常設展示の概要に近く,展示内容においてそのすべてを網羅しているわけではなく,掲載している考古資料は当館の代表的なものだけである。このため常設展示の項目には今後,展示しているものを
中心に多くの資料を追加していくことでより豊富な内容となり,理解しやすくなると思われる。
(2) 収蔵品データベース
常設展示の紹介である程度の収蔵品データベースの機能を持たせることも可能である。しかし,膨大な資料を収蔵しているため網羅的に行うことは不可能であり,実際あまり意味のないことでもある。考古資料は鑑賞の対象ではなく,歴史性や時代性をもつものであり,展示においても考古資料にはある時代のコンテクストの中で位置づけることによりその資料の価値が見いだされる。このためすべて網羅的に資料化していくよりもそれぞれの時代的特徴を示すものを常設展示紹介の中で追加していくことのほ
うが重要であると考えている。
(3) 縄文土器のデータベース
考古資料をつうじて山梨の歴史をみるとき,特に縄文土器は山梨の歴史性,時代性を現している他に,造形的も優れていることが多い。これは山梨のみならず日本を代表する縄文文化の特徴を持つものである。現在,別のプロジェクトで当館所蔵の約100点の縄文土器を3D映像としてデジタル化する計画がすすめられてもいる。将来的には
このプロジェクトの成果をこのWebページにリンクすることも考えている。これにより,バーチャルミュージアムのようにコンピュータ上で縄文土器を回転させ上から下から裏からも見ることができるようになる。

2 特別展の紹介
考古博物館における特別展は年間4回を計画している。春と夏には収蔵資料を中心に
山梨県内にかかわるテーマで行っている。秋には日本国内外に関わるテーマを設定し ,山梨との関わりや位置づけを考慮した特別展を行っている。冬には山梨県埋蔵文化財センターの発掘成果を速報したものが行われる。これらの展示会では展示図録や展示案内パンフレットを作成しているので,これをもとにWebページを作成することができる。ただ,収蔵資料以外のものについては所蔵者の掲載許可が必要となるが,いま まで考古博物館で対処している。
 これらの展示会紹介はメインメニューの特別展項目からサブメニューに入り,ここでそれぞれの特別展タイトルを選ぶようにして,特別展紹介ページへと移行できるようにしたい。

3 普及事業の提示
普及事業はおおきく講演会・講座と体験学習にわけることができる。情報提示の形としてはこれから行われる行事予定についての広報となる。博物館で刊行している「博物館だより」にも同様の情報が掲載されているが,すでに行われてしまった行事については一般の方にとってあまり意味のある情報ではない。そこで特に体験学習では,縄文土器作りや古代料理などをおこなっているが,どのように行ったかということを情報提示することにより有効であると考えている。縄文土器作り教室では実際にどのように作っていくのかその過程を細かく図示・解説したテキストを参加者に配布しており,こういったものをWebページ上で提示することにより参加できなかった人もこれにより追体験が可能となる。

4 公園内遺跡案内図
 考古博物館のある甲斐曽根丘陵・風土記の丘公園は40haの敷地内に20箇所以上の遺跡が知られており,保存整備され公開されている。実際に公園内にある古代の遺跡をみることが可能であり,ここの遺跡の出土品も博物館で展示されいる。現在,Webページでこの項目はないが,追加するべきであろう。博物館内でのコンピュータ案内システムではマルチメディアにより同様の機能を持ったものがあるが,館内のみの利用である。

5 山梨県下の発掘状況
埋蔵文化財センターの持つ情報により,山梨県下の発掘調査の様子や進行状況,成果などを知ることができ,最新の考古学情報として非常に有効である。

考古博物館のWebページ作成,更新にあたっての今後の課題であるが,じっさいのWebページ化を行っていく人材の確保の問題が非常に大きい。この人材の確保については,たとえば成田(1998)のように,教職専門の大学における科目の活動の一環として,教育ボランティアとして考古博物館のWebページ作成支援を行うという試みがある。社会教育施設にとっては,インターネット上に教育素材を発信することができ,学生にとっては社会教育施設における教育活動に参加しながら,その実態を身近に見ることができるという教育効果がある。

このような試みが円滑にすすめるためには,教育ボランティアと,社会教育施設との間のコーディネートを行う考古学,歴史学あるいは社会科教育関係の大学教官や大学院生の参加が期待される。

 


教育実践研究指導センター表紙


○最初にこのページを公開したのは1998年1月1日です。
○最初にこのページを公開したのは1998年1月1日です。
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